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GP輝凛E1 第0回 担当●河上裕マスター
「子供達の夢」


 大人と子供の違いって何なのか,考えたことはない?私はあるわ.たくさん,あるわ.背が小さいとか,力がないとか病気がちだからとか・・・そんなことじゃなくて,心の中の話よ.大人になることって,どんな気持ちの変化があるのかしら.大人になるって,どんな感じなのかしら.何を境目として,大人になったというの?


「なあ,お前聞いたことあるか?」
 考え事をしていたリュアナ・ウィートの顔の前で,ピカピカは突然そう言った.リュアナは生まれ付き目が見えないので,その距離は分からないだろうが.
「なぁに,何の話?」
 リュアナは不思議そうに首を傾けた.何故か顔を赤くするピカピカ.
「いや,何がって光る洞窟の話だよ!」
 力説するピカピカは,少し興奮気味のように思えた.
「光るどうくつ?どこにあるの」
 少し興味をそそられたのか,リュアナはわくわくした顔つきで身を乗り出す.ピカピカは少し得意そうだ.
「ふふん,それがあの聖なる山!凄いだろ?あそこの中腹くらいにあるんだけど,入り口は小さいけど中は凄く広くなっててさ」
 身振り手振りでピカピカは説明する.リュアナはそれを興味津々という顔で聞き入っていた.
「それでさ!あそこには,見たこともないようなオバケが出るんだってさ!」
 そう言われて,普通の女の子なら怯むところだが,リュアナもピカピカもそのへんが普通の女の子とは違った.
「本当?」
 リュアナはより一層身を乗り出して興奮してきたのか,布団から起きあがった.その勢いでベットの端にゴツンと頭をぶつける.
「いったーい」
 思わずリュアナが言うと,ピカピカは心配そうにその頭を撫でた.
「大丈夫か?気をつけろよ」
 そう言いつつも,まだリュアナもピカピカも嬉しそうだ.
「リナ,一緒に明日の夜出発してさ,そうだなあ.三日もあれば余裕だろ?そのオバケの噂,確かめてみないか?」
 リュアナは少し痛む頭をさすりながら,ピカピカの言葉に微笑んで頷いたのであった.
 冒険の,始まりである.まだ少女たちはこれが大冒険になるとは思っていなかったのだが.


 リュアナ・ウィートはプラネタという種族で七歳になる少女だ.根は明るく,芯の強い子なのだが生まれ付きの全盲者だった.リナにはもう一つ生まれついてのものがあった.いわゆる予知能力というヤツだ.この能力で占いのようなことを職業としていた.
 リュアナは兄であるアビーと二人暮らしをしていた.両親共に坑夫で山方面で離れて暮らしている.アビーも坑夫見習いなのだが,その殆どをこのオクヌ村で,妹と暮らしているのだ.まあ(本人は否定しているが)超がつくほどのシスコンということは周知の事実だから,という話も否めないのだが.
 とにかく二人は仲が良かった.それも周知の事実だ.このピカピカという十歳になる少女はヴィータという種族で,口は悪いが根は優しい.隣に住むガナン・イルビアラというセルバの少年?も彼らとは幼なじみだ.最も寿命の長い彼らには,プラネタでもヴィータでも,短命種族と感じられるだろうから,幼なじみという言い方が適切ではないかもしれないが.
 ガナンは,それでも彼らにとって,温和で優しい良き隣人であった.その長寿さ所以で色々なことを知っていて,彼らに教えてくれるし,何より両親と離れ離れで暮らしている彼らにとって,親のような役割も果たしていたのかもしれなかった.
 まあ,ようは彼らは仲よしさんなのであるということが分かれば,それでいいのだ.


 翌日,いつもどおり朝食をとっていたリュアナ・ウィートは兄であるアビーにとんでもないことを言い出した.
「お兄ちゃん,今日私ね,聖なる山にオバケを見にいくことになってるの」
 飲みかけの果物のジュースを,ブッと吹き出すアビー.
「なッ・・・」
 ゴホンゴホンと強く咳き込む.
「リュアナ,お前何て言ったんだよ?」
 目を真ん丸くして,まじまじと妹の顔を覗き込む兄・アビー.
「だからね,オバケを見にいこうって.ピカピカに昨日誘われたのよ,私.聖なる山にあるどうくつに,オバケが出るっていう噂があるんですって.今日の夕ご飯食べてから,お兄ちゃんも一緒に行きましょうよ.お仕事まだしばらくはお休みなんでしょう?」
 にこにこ微笑む妹に,目眩を感じる兄.
「リュアナ,お前なぁ・・・」
 現実主義の兄・アビーは,オバケなんかいるわけがないと思っていたし,妹の戯言なんてそれこそ信じるワケがなかった.だがそのときコンコン,とノックの音がして,二人の会話は中断された.
「おはよう,アビー」
 微笑んで入ってきたのは,ガナン・イルビアラその人(セルバ?)であった.いつもこの穏やかそうな隣人は,二人が些細なことで喧嘩していると,まあまあと言って仲裁してくれるのだ.
「おはよう,リナ」
「おはようございます,ガナンさん」
 二人は微笑み合う.そしてガナンは横にいるアビーが,頭を押さえているらしいことに気付いて声をかけた.
「アビー,どうしたんだい」
 不思議そうに自分を覗き込むガナンに気付いて,思わずアビーは苦笑する.
「いや,こいつが朝っぱらからオバケとか言うからさ」
 そう言われて,ガナンは大きく頷いた.
「ああ,もしかして聖なる山の光る洞窟の話ですか?」
 ガナンの言葉に二人は驚き,思わずまじまじと彼を見つめた.
「ガナンさん,知ってるんですか?」
「ガナン,それってマジなのかよっ!」
 二人同時に言葉を投げ掛けられて,不思議そうに目をぱちくりとさせると,ガナンは頷いた.
「ええ,あの光り苔のある洞窟のことですよね?夜になると,それはもう美しいという話ですけど」
 ガナンがにこにこと話すのを聞いて,思わず鼻で笑うと,勝ち誇ったようにリュアナの方を見た.
「ほぉら見ろ.噂なんてな,そんなモンなんだよ.第一世の中オバケなんてもんが存在するわけないだろ」
 そう言われて,リュアナは思わず言葉を詰まらせたが,負けじと言い返す.
「そんなの分からないもんっ!行ってみなきゃ絶対いないなんて言えないんだから!」
 二人はうーっと睨み合うような格好になってから,ぷいっと反対方向を向いた.
「よ〜し,じゃぁ確かめてやろうじゃないか.今夜,行ってやるぜ!」
 喧嘩になりそうな二人の間で,オロオロしながらもガナンは不思議そうに二人を見比べた.


 その日のお昼過ぎ,オクヌ村の中央掲示板には,子供のつたない文字で書かれた一枚のはり紙があった.
きょうよる8じ,せいなるやまのどうくつたんけんへいくひとぼしゅう.オバケのうわさをいっしょにたしかめましょう.
リュアナとアビーより
リュアナとアビー,そしてピカピカは嬉しそうにそのはり紙を確認して,うんうんと頷いた.その横で,やっぱり穏やかに微笑んでいるガナンも居た.
 さあ,冒険を始めよう.新たなる扉を選んで開くのは,間違いなくあなた達自身なのだから.


GP輝凛E1 第0回「子供達の夢」終わり

GP輝凛E1 第1回へ続く

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